最新Windowsソフトウェア事情(第28回)

Windowsコンソーシアム顧問 高橋 三雄
(mtaka@fsinet.or.jp)



Peter Nortonとの再会

 事務局を通じてシマンテック社から「Norton Utilities」と「Norton AntiVirus」が届いた。パッケージを開けると黄色の表紙に懐かしいPeter Nortonの顔が大写しで載っているではないか(図 1)。もうすっかり過去のことになってしまったが、10年以上前のまだ成蹊大学にいた頃に、たしか当時のソフトウェアジャパンの昆野社長に頼まれて「Norton Utilities」ユーザー会の会長を引き受けたことがある。そのおりに、ユーザー会の発足式に出席したPeter Nortonと話を交わすことができたのであった。その後、お互い何の連絡もしあっていないので少なくともPeterは私のことを覚えているはずはない。

図1
 

 それはともかく、その後、富士ソフトから依頼されて「Peter Norton Utilities」の本の翻訳をしたり、以前シマンテック社製品の日本語化と販売を担当していたシーイーシー社の依頼でQ&A(人工知能的なユーザーインタフェイスを備えたユニークなカード型データベース)の解説本を執筆したりしたことがあったので、シマンテック社およびPeter Nortonには関心があった。今回はこの浅からぬ因縁を背景として上記2製品についてその概要を紹介することにしよう。

 話はかわるが4月下旬、岩波書店から「マルチメディアを楽しむ」を出版した。これで石田晴久教授監修になる「ゼロから学べるパソコン入門」全5巻がようやく完結したことになる。岩波書店からは新たに「実戦パソコン入門」シリーズの企画案も示されており、引き続いて日本におけるパソコン(そしてソフト)の啓蒙/普及のために微力ながら貢献したいと考えているところである。ところで「マルチメディアを楽しむ」の執筆にさいしては多くの苦労があった。最大の事故(失敗)は図版のグラフィックファイルを保存していたzipおよびMOディスクを壊してしまったことである。私は原稿の執筆にはもっぱら東芝Dynabook Tecraを用いており、各種ファイルのバックアップにはzipドライブ(プリンタポート)を使っていた。しかし、印刷所との関係でMOも用意して欲しいという依頼があり、PCカード(SCSI)経由でMOを使うことにした。パラレルポートに接続したzipからSCSI接続のMOへとファイル転送を始めたのであるが、途中でハングアップしてしまい、どうしても動かなくなった。やむを得ずパソコンをリセットすることになったが、その結果、zipディスクが読めなくなり、また、MOディスクにも一部のファイルしか保存されていなかった。コピー元のzipディスクが壊れることはまったく予想していなかったのでバックアップは十分であると考え、容量不足に悩まされていたこともあってハードディスクに保存していた図版のファイルは全削除してしまっていた。印刷間際の最終段階で150点におよぶ図版のファイルをすべて失ったことはショックであった。さいわい、紙にプリントした図版が残っていたのでそれにもとづいてすべて、作り直した。当然のことながら丸1日、無駄な時間を費やしてしまうことになった。もちろん、ソフト開発のプロのみなさんなら短時間のうちにパソコンのハードディスクから、私にとっては削除して消えてしまったはずの図版ファイルを救い出してきたことだろう。そして一般のパソコンユーザーの一人である私にとっても、もし「Norton Utilities」が手元にあったならば、失ったはずの図版ファイルをたちどころに救出できたはずなのである。Peterとの長い別離が、図版を失うことによって、1日という時間の浪費はともかくとして、出版間際のぎりぎりな状況のもとで著者および編集者に心理的なショックを与える結果になった のである。

 Norton Utilitiesの役割は大きく3つに分類される。一つはパソコンに問題が生じないように各種の分析を行い、問題が生じそうな状況に陥った場合はその対応策を講じること(予防)、二つ目は誤ってファイルを削除してしまったり、パソコンがどうしても起動しなくなった場合にその回復を支援してくれること(回復)、そして三つ目は断片化が進んだハードディスクの改善や不要なファイル削除などによって処理効率を高めることである(効率化)。これらの機能の一部はWindows95アクセサリーの「システムツール」に含まれるシステムモニター、スキャンディスク、デフラッグ、ドライブスペースなどによって果たすことができるが、Norton Utilitiesはさらに高度で使いやすい支援機能を与えてくれるのである。

図2
 

 Norton Utilitiesをインストールするとパソコン起動とともにNorton System Doctorが動きだし、たえずシステムの細部をモニターしてその結果を見やすく表示してくれる。図 2はその画面例である。
 画面中央に「使用CPU」、「Cの空き」といったシステムの状態を示す指標がアナログ的なグラフやデジタル表示されている。これらの指標を見ていてたとえば「Cの連続性」の下段に見えるように90%に下がったときに警告を発したり、自動的にハードディスクの最適化(デフラグ)を実行させることができる。また、指標によっては青、黄色、赤のランプで表示されるものもあり、青ランプがついている間はとくに心配する必要はない。システムの状態をモニターする指標はさらに数多くあり、ウィンドウ内にそれらのどれを表示するかは自由に選択できる。

図3
 

図4

 

 Norton System Doctorのユーティリティメニューには上記の三つの機能に対応するサブメニューが用意されている。たとえば、ハードディスクの効率化を図るためには図 3のように、「Speed Disk」を選択すればよい。それによって図 4のように指定したドライブのディスクマップが表示され、セクターの連続状態が指数として示される。それらの結果を見て実際に最適化の作業を行うかどうかを選択できる。図では現在のところ、さほど問題にすべき状況にはないことがわかる。

図5
 

 回復機能の基本は削除したファイルの復元やハードディスクのチェックと問題点への対応であろう。ユーティリティメニューの「回復」にはそれらの機能が含まれており、たとえば「Disk Doctor(ディスクのチェック)」を選択すると図 5のようにパーティションテーブル以下の項目をチェックし、さらにディスクの表面テストまで実施して問題の有無を調べてくれる。また、問題が見つかった場合はそれぞれの状況に応じた対応を自動的に行ってくれる。私のような一般ユーザーにとっては個々の項目の意味は不明であるが、プロのプロであるPeter Nortonなら安心してまかせることができるだろう。

図6
 

図7
 

 最近はソフトも大型化し、推奨CPU以上の仕様のパソコンでないと実際的でないようなソフトも見られるようになった。たとえば、「ペンティアム100MHz、メモリ16MB以上を推奨」といったように記載されている。しかし購入当初ならともかく、現在自分が使っているパソコンの仕様がどうなっているかはすぐには分からないこともある。そうしたときに、ユーティリティメニューの「情報」を使うとパソコンの詳細な情報を取得できる。
たとえば図 6では現在使用中のパソコンが「ペンティアム200MHz」であることなど、詳細な情報が表示されている。また、ウィンドウ上段のタブにはそれぞれの構成要素のさらに詳細な情報を見るためのタブも用意されている。たとえばさらにメモリの使用状況を表示させてみると図 7のように、画面に表示しきれないほどのソフトが動いていることがわかる。RAMは32MBしかないのに、ハードディスク上のバーチャルメモリを使って56MBものソフトが起動されている状況は予想外であった。これでは個々のソフトの動作が遅くなってしまうおそれもある。余計なソフトがいつの間にか起動していることもあるので、必要ないソフトは起動しないように設定するためにもこうした情報が役立つことになる。

図8
 

 Norton Utilitiesやもう一つのAntiVirusはたえず機能アップや情報が追加されている。これらの追加機能や最新情報はできるだけ早く入手したいものである。そうしたときに自動更新機能(LiveUpdate)を使うとインターネットによって最新情報をダウンロードして更新できる。図 8はこのLiveUpdateの設定を行っているところである。
 最近、ウィルスが急速に蔓延しているといわれる。先日もNHKの「クローズアップ現代」でコンピュータウィルスが話題になり私もよく知っている多摩大学の那野比古教授が分かりやすく解説していた。私はこれまでウィルスの被害にあったことはないがTVを見ると人事ではないことが分かった。このウィルス対策にはワクチンソフトが役立つ。Norton AntiVirusは代表的なワクチンソフトの一つである。パソコンに常駐してたえずウィルス侵入をチェックさせておけば安心である。もちろん、ウィルスとワクチンは「いたちごっこ」の状況にあり、新顔のウィルスに対応するには最新情報を追加更新しなければならない。そのためにインターネットを通じたLiveUpdate機能が効果を発揮することになる。

図9
 

図10
 

 図9は手動でAntiVirusを起動したところである。ここで「スキャン開始」を選択すると指定したドライブをチェックしてウィルスの有無を調べ、問題が見つかった場合はその対策もとってくれる。図 10はスキャン終了後の画面である。スキャン中には、上段のウィンドウ内のように、現在どのフォルダー内のどのファイルをチェックしているかが動的に表示される。現在のところ、ウィルスの感染はないので一安心である。重要なファイルにはあらかじめ「予防接種」しておけばさらに安心である。

図11
 

図12
 

 いまのようにウィルスについて何も問題がない状況がつづくとウィルスに対する関心も薄れていくだろう。それでは困るので ウィルスが蔓延している状況をたえず知っておくことが望まれる。そのためには無数にあるウィルスの情報一覧があれば、 「これは大変だ!」と思わせてくれるだろう。AntiVirusには図 11の上段に見える「ウィルスリスト」ボタンをクリックすると中央 のウィンドウ内のようにウィルスの一覧がリストアップされ、それぞれのウィルスの詳細情報をさらに表示させることもできる。 たとえば「July 13th(ちょっと古すぎる?)」を選択してみると図 12のようにそのウィルスについての詳細情報が表示される。 ウィルスのチェックは定期的に行うように設定しておけばよいだろう。そのためには図の上段の「スケジューラ」ボタンによって 図 13のような設定画面を表示させ、スケジュールを設定できる。

図13
 

 このようにして今回は懐かしいPeter Nortonとの出会を2種類のソフトの上で紹介した。 シマンテック社の他の製品についてもさらにためす機会をえることができればさいわいである。

(筑波大学大学院 経営システム科学 教授)


Contents         Windows Consortium ホームページ